財団法人 大川美術館     OKAWA MUSEUM of ART, KIRYU

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                  大川 栄二

 オープン後まだ10年だが、40回に及ぶ企画展は他館に多い巡回展とは異なり、当館だけのオリジナルだけに大変である。従って今回は少し趣を変えて選んだ軽快なアメリカ現代版画で、一寸重苦しい感の否定出来ぬ従来の流れに、一息の「無限の空間」を試みたのである。

建国後の歴史浅く古い文化遺産を持たぬアメリカ人は、逆に日本人より深いところで芸術に憧れるハングリー精神が強かったようだ。だから巨大な財力を駆使して買い漁ったヨーロッパ絵画群でアメリカ各地に美術館を創ったが、所詮は観光的な満足感だけであり、民族のこころの誇りとは到底なるものではない。そんな土壌だからこそ生まれたアメリカ独特の世界に誇る現代版画は、正に吾々の学ぶべきアメリカの開発精神であり民族意識なのである。

ヨーロッパ絵画の従来の常識に捕らわれぬアメリカ独特の創造力、特に1929年大恐慌の際に、ニューディール政策に基づき職のない画家を救済する為の全国的な公共壁画制作をした事は、結果的に画家達に大画面に自由に取り組む快感を持たせた。それが一種のスポーツ感覚と相俟って、ポロック、デ・クーニングなど抽象表現主義とかアクション・ペインティングを生み、更にリキテンスタイン、ウォーホル、ジャスパーほかのポップ・アート、そしてニューペインティング、また逆行するミニマム・アートまでへと発展し続ける、正に「アメリカン・ドリーム」となったのである。

そんな中で、戦後の現代美術の顕著な傾向としてあらゆる美術のジャンルの枠は取り払われた。そして版画の領域では、独自の表現を確立しようとした版画工房の存在が、これら画家とのコラボレーションを通じ、時代に先駆ける多様化を育て、無限の価値を生み出しながら21世紀へと挑戦しているようである。特に一握りの資産家だけのものだったタブローと殆ど変わらぬ芸術性を持ちながらも、庶民の手が届く版画ならではの経済的普遍性には人間の英知が感じられて嬉しい。

       (理事長 兼 館長)

■写真キャプション
No.48 フランク・ステラ
Ossipee1974

 

 

 

財団法人 大川美術館

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Tel:0277-46-3300 Fax:0277-46-3350
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開館時間:10:00〜17:30(入館は17:00まで) 
休館日:毎月曜日(月曜祝日の場合は火曜日)、年末年始
入館料:一般1000円、高大生600円、小中生300円
駐車場:水道山公園駐車場(無料)