財団法人 大川美術館     OKAWA MUSEUM of ART, KIRYU

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5つ版画集  −「欧州版画の一断面」展によせて             
大川 栄二  
  あのロートレックが「版画こそ作家の生命である。私の場合油彩やデッサンは、あく迄も版画の第二義的価値でしかない、即ち油彩はデッサンと同じく版画の習作とも云える。」と語っている。またムンクも長谷川潔も同じようである。

  ある目途を求めて油彩以上の芸術的密度を極める版画家の誇りなのだろう。だが日本人の場合は、往昔では今の新聞紙並だった複製浮世絵版画の安物意識が牢としてある為に「なんだ、版画か・・・」と疎んじ集客性も乏しいゆえか各美術館で余り採り上げないようだが、当館の場合とてオープン来50回に及ぶオリジナル企画展を開催し乍らも版画展は今回で4回目であり、偉そうなことは云えない。

  とにかく版画はルーブル宮殿の天井に「絵画・彫刻・版画・建築」と明記されているように全く独立した一つの芸術形式であり、換言すれば油彩、岩彩、其他のタブローには絶対出せぬ表現様式を追求し、同一画家の同じモチーフでもより良い作品が限りなくある。従って欧米では室内掲示作品としてはタブローに比し複数オリジナルの廉価さも大きく手傳い油彩作品に数倍して多用されているし、又日本でも余程の豪邸でない限り酒落れたインテリア感覚の版画の方が重い油彩よりハーモニーする為に昨今目立って普及されて来たことは嬉しい。だが、日本画商域に頻発する有名画家タブローの複数オリジナルでない複製版画(リプロダクション)が決して廉くなく売出されているのは、どうも戴けない。

  扠、今回は第40回企画の「アメリカ現代版画展」以来2年ぶりの「5つの欧州版画」だが、当館収蔵品より選出したものゆえ特に学術的相関性は薄い。それでも、エゴン・シーレ処女作版画の《裸の男》を含み同世代の新進画家群を竝べた和紙刷りの貴重な「ゼマ・マッペ・1912年刊」初めピカソ中心の「キュビスムについて・1947年刊」クリンガーの代表的版画集「死について第二部・1898年刊」ほか2集を含めユニークな5つの版画集となって居り、前回の明るく派手な「アメリカ現代版画展」とは一味違う格調ある人間性に包まれた“典雅なエコロジー”を覚える空間となることを信じたい 。
  末筆ながら本展開催にあたり資料をご提供賜った関係者、特に宮城県美術館に対し深く感謝申し上げる次第であります。 
(理事長 兼 館長)

財団法人 大川美術館

〒376-0043 群馬県桐生市小曽根町3-69(水道山中腹) 
Tel:0277-46-3300 Fax:0277-46-3350
okawa-m@theia.ocn.ne.jp

開館時間:10:00〜17:30(入館は17:00まで) 
休館日:毎月曜日(月曜祝日の場合は火曜日)、年末年始
入館料:一般1000円、高大生600円、小中生300円
駐車場:水道山公園駐車場(無料)