財団法人 大川美術館     OKAWA MUSEUM of ART, KIRYU

<br> &nbsp;「武田久遺作展」によせて</font></p> <p align="right"><font color="#000080">大川 栄二</font></p> <p><font color="#000080">&nbsp; 仙台で医師をしている次男より、長文の封書を受け取った。50年に亘る美術教師生活の傍ら自分の絵を描き続けながらも、いわゆる売り絵は生涯描かず、至難な洋画家との両立を生き抜いた無名の画家である父・武田久の作品を世に広く見てもらいたいという真摯な心情が美しく滲み出て筆者の胸を打ったのが、一昨年の春だった。  彼は美術冊子アートトップ第175号記載の弊拙文「21世紀美術館像」での、「作者の有無名や値段如何に係わらぬ、作品から漂う詩情と画家の人間性の滲むマチエールが一貫せる作品評価の基準である」との記述に感動したという。是非とも父の絵を観て欲しいと云う切々たる彼の文面に惹かれ、半年後の10月に彼の実家を訪ねるべく宇都宮に出向いたのである。</font></p> <p><font color="#000080">&nbsp; 約100枚に及ぶ100号大の半具象的抽象作品を中心に10号までの具象作品、無数の水彩デッサン類を拝見、先ず驚いたのは、素描類にみるデッサン力の素晴らしさであった。またそれを土壌とした初期から絶筆までの一貫した流れと、年を重ねるごとに明らかに前進している筆勢と堅固なマチエール及び透明感であった。特に73歳の晩年まで衰えることなく向上をし続けている感の希有な素晴らしい画家かと推断し、「絵は人格なり」と考える筆者の琴線に触れ、ごく自然に企画展連動への衝動が胎生したのである。</font></p> <p><font color="#000080">&nbsp; これ程にプリミティブでユニークな画家が、美術教師とはいえ、中央では全く無名に近いローカル画家に終始したのか?しかも二紀会本展に同人として約40回に亘り大作を毎年出品し続け、また地方とて夙に仲間と共に栃木二紀会を創立し、地方リーダーの役割を果たしたと聞くだけに不思議である。恐らく私の独断に近いとは想うが、二紀会独特の明るい雰囲気である宮本、田村、宮永という一連の市場志向の潮流の中に埋没せざるを得なかったか。しかし、それを全く意に介せず、時流や世相に媚びぬ「美」そのものを追求する抽象的絵画に終始した事が、温和、誠実、謙虚の性格と相まって晩年に近づくほど不思議なまでに強靱で透明なマチエールを作り出し、独自の存在感を生み出したのだろう。</font></p> <p><font color="#000080">&nbsp; 清純な空気に詩的な拡がりを感ずる水彩画は云うに及ばず、油彩でありながら水彩画以上のファンタスティックな世界に挑み続ける抽象絵画と覚える。とにかく、弊館で採りあげたことをよかったと信じている。  末筆失礼ながら本件に望外のご協力を賜りたる武田家の皆々様に深く感謝する次第です。</font></p> <p><font color="#000080">&nbsp;(当館理事長兼館長)
 

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休館日:毎月曜日(月曜祝日の場合は火曜日)、年末年始
入館料:一般1000円、高大生600円、小中生300円
駐車場:水道山公園駐車場(無料)