島崎蓊助(おうすけ)(1908〜1992)は、文豪・藤村の三男に生まれ、14歳で父のすすめで性格の全く違う次兄鶏二と共に、川端画学校に通い早過ぎる画家の道をたどった。プロレタリア美術運動に入り、ベルリンにも留学、千田是也らとバウハウス周辺の芸術運動に身を投じた。戦中は陸軍報道班員として中国の戦禍をスケッチ、戦後の帰国後は静かに絵を描きつづけながらも全く発表せず、藤村死後約20年間を、父に逆らった前半生を黒い影としたのか、壮大な「藤村全集」編集に奔命し、正に「描かざる画家」として世に聞こえたのである。その眼は思想の摂取と消化に向けられ、戦後書き始められた日記と芸術研究のための「ノオト」は百数十冊を数える。 だが、藤村全貌への見通しをつけた1970(昭和45)年、作品制作に力を注ぐことを決意し、渡独してハンブルクで描きなぐった作品で、翌年、日本橋・柳屋画廊で生涯一回、僅か2週間足らずの個展となった。その後密かに絵は描き続けたものの全く発表せず、見える行動の殆どは藤村の影を求めてか、詩誌「歴程」の陰のスポンサーとして活躍し、草野心平、会田綱雄、辻まことらと親交を結び、歴程賞の創設にも尽力した。
このハンブルクで描かれた作品群は、セピア一色の厳しいモノトーンの中に、国内外誰も描かないような、閑魂と優しさを共存する静謐透明な未曾有の画趣であり、画家であることの本命を絶えず心に秘し、約30年余りの彷徨をして初めて生まれたものである。本展は、この個展時の作品を中心に、川端画学校時代から中国スケッチ、そして晩年、さらには兄・鶏二の作品なども加えて、その才を世に問うものである。
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@.展覧会名
第54回特別企画展
描かざる幻の画家 島崎 蓊助 遺作展
A.会期・会場
◇ 2002年6月5日(水)〜9月29日(日) 101日間
(月曜日は休館。月曜祝日の場合開館、翌日火曜日休館)
10:00〜17:30(入館は17:00まで)
◇ 大川美術館・企画展示室
群馬県桐生市小曽根町3-69(水道山中腹) 〒376-0043
TEL. 0277-46-3300 FAX. 0277-46-3350
URL. http://www.kiryu.co.jp/ohkawamuseum/
E-Mail. okawa-m@theia.ocn.ne.jp
B.主催等
主催: 財団法人 大川美術館
助成: 財団法人 花王芸術・科学財団
C.主な出品作品
島崎 蓊助 作《馬籠 恵那山》1943〜44年頃 油彩 31.8×41.0p
同 《村(バートゼーゲベルク)》1970年 油彩 60.6×72.7p
同 《ハンブルクにて》1970年 油彩 72.1×91.0p
約70点
D.入館料(常設展示と共通券)
一般:1,000円 大高生:600円 中小生:300円
E.交通のご案内
◇ [電車利用(東京方面の方)]
・東武浅草駅より赤城行き「特急りょうもう号」
で新桐生駅まで100分。駅よりタクシ−10分。
◇ [電車利用(栃木、群馬方面の方)]
・JR桐生駅より徒歩13分。
◇ [自動車利用]
・東北自動車道、佐野・藤岡I.C.より50分。
・関越自動車道、東松山I.C.より60分。
・北関東自動車道、伊勢崎I.C.より30分。
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●同時開催
常設展 : 松本竣介・ピカソを巡る内外の画家たち
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