民族衣裳が変える

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 武藤さんは一九九〇年に群馬県繊維工業試験場を退職したのですが、大学卒業後、茨城県繊維工業指導所に一時勤務、その後、群馬県伊勢崎繊維工業試験場、群馬県繊維工業試験場で三六年間一貫して繊維技術の研究指導に携わりました。絣(かすり)、紬(つむぎ)を中心とした日本の高度な伝統技術が専門でした。仕事の合間には古い時代の失われていく織物道具や布の収集にも熱心で、それらについて独特の美意識も持っていました。

 日本の資料だけでなく、海外の民族衣裳やその染め織り技術にも深い関心を示し、直接海外に出向いての収集も始まりました。そのなかでも東南アジアを中心に、タイ、インドネシア、台湾などの民族衣裳は数千点余りになります。特にバリ島には一〇回以上行き、毎回大きな荷物を持ち帰り、おそらく個人の収集では国内でも有数のものでしょう。イカットと呼ばれる絣織物がその収集の中心で、これはインドネシアの各種族ごとに独特の模様を持ち、集めれば集めるほど興味は尽きないといいます。

 武藤さんは現在まで集めたこれらの布を私蔵せず、いろいろな場所で公開したり、講演会を催したり、また織塾を訪れる人には誰にも気持よく見せ、触らせ、説明してくれています。

 世界の民族衣裳のすばらしさ、その染織技術のすばらしさに魅了された武藤さんは、試験場在職中の一九八〇年に「民族衣裳と染織展」を企画、県内県外の民族衣裳を持っている多くの人たちに呼びかけ、それらを一堂に展示し、そのすばらしさを見てもらうことを考えました。これは多くの協賛者を得、四〇人からの一、一三二点もの世界の伝統織物が公開されました。いろいろな人たちが思入れをもって手に入れた資料を借りるには随分と苦労があったということですが、地方の一都市でこれだけのボリュームと内容の深い展示会は前例がなく、市の繊維関係者にも大きなショックと驚き、感動を与え、その後の桐生産地の生き方を変えたというほどのスケールと内容でした。もちろん市外、県外から、また一般の人たちも大勢見にきました。有名デザイナーも何人も駆けつけ、その後の作品に影響を与えることともなったのです。

 一九八六年には二回目の「民族衣裳展」を開催、そのなかで武藤さんは次のように語っています。「中国から渡ってきた漢字には糸へんの字が非常に多いのに気がつきます。数えてみたら二七七字もありました。漢字が出来たのは今から三、○○○年も前のことで、殆どへん≠ニつくり≠ゥらなっています。この中に人が作った糸がへん≠ノ沢山使われているのはいかにそれが重要で、必要なものだったかの証拠でしょう。人が作ったものがへん≠ノ使われているのは糸のほかに、衣へん、車へん、舟へんなどがありますが、糸へんはそのなかで飛び抜けて多いのです。そのことは糸にまつわる種類、技術の多さを物語っています。こんなことと織物文化を対比させこの展示会を観るのも楽しいでしょう」と。ファッション創造の基地として将来を賭ける桐生市にとって、世界の民族がつくり上げた民族衣裳を一堂に並べ勉強することは、再びショック療法となりました。

 武藤さんはこの間、「世界の藍染展」も企画し、大いに話題を提供しましたが、これらに出品し協力した人の輪を何とかまとめ上げ、一つの形にしてみたらという途方もない考えにいたりました。これらの人々は収集家として以外に技術を持った人がたくさんいて、その人たちを桐生に集結させたら、その熱気が産地を活性化させるに違いないと感じたようです。

 このほか、武藤さんは来るべきデザインの時代に備えて産業デザイン振興会設立に尽力、繊維以外も含め桐生市広域から二〇〇人もの会員を集め、勉強会などのユニークな活動も行ってきました。そして一九九〇年3月、自分の理想を自ら実現するために現代の寺子屋≠めざし、その名も「桐生織塾」と命名し旗揚げすることになったのです。

 

 

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